対人賠償保険の一括払制度につい
昭和30年代から40年代にかけて、モータリゼーションの発展とともに交通事故によってケガを負ったり、死亡する人が増加し、それで困っている人を国としても放置できないということになり、自賠責保険制度ができ、さらにその不足分を補う任意保険が出てきました。
その後、それぞれの保険の内容や金額に関する規定は変更されてきましたが、ベースに自賠責保険がありその上乗せで任意保険という構造と、自賠責保険は比較的安い保険料で経済的な損失補てんのみ行い、任意保険は少し保険料は高いものの、いろいろな付加サービスを提供するという基本的な仕組みは、現在まで変わっていません。
文明国家であれば、自分の運転ミスによって自動車事故が発生して相手がケガを負ったとき、相手の治療代や通院交通費、仕事を休めば休業損害、その他いろいろ出てくる損害を負担してあげなくてはいけないことは万国共通です。
自分が任意の自動車保険に加入し、その保険の対人賠償が使える場合は、その金銭の支払やそのための諸々の手続を、保険会社がやってくれます。
当然、自賠責保険が使えるわけですが、自賠責保険の使用も含めた手続を、保険会社があなたに替わってやってくれるのです。
具体的には、任意保険会社が、ケガした相手に必要に応じて金銭を支払ったり、必要な手続をして、ケガが直った段階で慰謝料も含めた被害者の損害額を計算して、それまで支払ってきた金額との差額を精算し示談することで、一連の損害賠償を終結させる、その後、本来自賠責保険から支払われるべき金額を請求、回収して事件を終了させるということを行います。
この間の各種の手続は膨大なもので、とても素人の手に負えるものではなく、特に別に本業のある人にとっては、金は何とかなったとしても時間が無理ということになります。
しかし、損害保険会社も営利事業ですから、法律上も保険契約上も道義上も義務のないことまで、奉仕してくれることはありません。当然費用がかかるわけですから、そのような余裕があるのならば保険料を下げろという話になります。
そこで、ケースによって被害者は、自分で相手の車に付いている自賠責保険に請求手続きを取らなくてはならない場合が出てくるのです。