「自動車事故と損害賠償」


 自動車学校で習うように、自動車を運転していて、故意・過失によって他人をケガさせたり、死亡させたり、他人の車や建物を損壊すると、刑事責任、行政処分の他、民事責任すなわち法律上の損害賠償責任が生じます。
 法律上の損害賠償責任とは、一般法である民法に規定されている不法行為責任の他、自動車事故の場合は自動車損害賠償保障法(略して自賠法)という特別な法律による損害賠償責任を指します。
 自賠法では、「自動車の運行によつて人の生命又は身体が害された場合における損害賠償を保障する制度を確立する」また、「自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる」と規定されています。
 つまり、対人事故の場合は、まず自賠法が適用され、対物事故の場合は民法の規定が適用されることになります。
 どこが違うかというと、民法は一般的に、加害者に故意・過失があったことを被害者が立証しなければなりませんが、自賠法では、先の規定の但し書きで、加害者が三条件を立証できなければ責任を免れないとしている点です。
 例えば、信号のある交差点での出合頭事故で、双方ともが“自分の対面信号は青だった。”と主張して裁判したとき、民法の規定では、被害者が相手の信号が赤だったことを証明しなければ被害者の負けですが、自賠法を適用すると、加害者が、自分側の信号が青であったことを立証できなければ、被害者の勝ちになることです。つまり、理屈の上では、物損では負けたが、人身損害では勝ったということが起こり得るのです。